Something

Takeshi Hirano

個人展覧会「サチ」

個人展覧会「サチ」

「サチ」というかけがえのない存在。
「サチ」と私の交流はもうずいぶん長い。
その間、「サチ」は私に様々な表情を見せてくれた。そして、ある時期、私は「サチ」ばかり描いていた。

ふと気がつけば、スケッチブックを開いて「サチ」と対峙している。そんな日々を繰り返した。しかし、たいていの場合、「サチ」は私のことを無視する。いや、私をそこに存在しないものとして扱うのだ。

実はその距離感が私にはとても心地いいのである。
今、こうしてそれらを眺めてみると、その稚拙さに笑いがこみ上げてくる。

しかし、こうも考える。
私は「サチ」の絵を描いていたのではなく、「サチ」と会話していたのだ。
丁寧に描いた絵、描きなぐった絵、デッサンの狂った絵、構図のなっていない絵、尻切れとんぼのような絵・・・…

それらは私と「サチ」が交わす会話の内容によって変化する。そして私はそれらの絵を眺めることによって、そのとき交わした「サチ」との会話の一部始終を思い出すことができるのである。

そんな「サチ」が平成31年4月4日、18歳で家族に見守られながら天国に旅立った。ちょうど桜が満開の頃だった。

私の心の穴を埋める「サチ」の画集より抜粋した「個人展覧会」をご覧ください。
平成も終わり、まもなく令和の時代が始まろうとしています。

平成31年4月29日 記

何を思うサチ

にらめっこですか?

何、描いてんだよ。

もう行方不明になるなよ もう・・・

半分、消えてる

隠れたつもりなんだろうか

うとうと

また炬燵の中にいた 気持ちよさそう

なんちゅうかっこう? 寝てるのか?

お目覚めですか。

情けない顔するなよ

モモンガにしてみた

サチは白い足袋を履いている
ピンク色の肉球がカワイイ

「サチ」はさっちゃんにだけは抱かれる
同じ「幸」だから?

さっきから、こたつにもぐり込んで
出てこなかったサチが、ようやく顔を出した。
「やせがまんしてたな」画家がそう言うと、
サチはプイと顔をそむけ、二階へ上がっていった。

とらえどころのない表情が画家にはたまらなく愛らしい
何かを見ているようでもあるが、
何も見てないようにも思える「サチ」の視線。
画家はそんな「サチ」の目を描くことが好きだ。

何考えてるん。

困った困った「サチ」

頼むから こっちを向いてくれ

旅立ちの2日前