※臓器の画像を含みます。閲覧に注意してください。 肝臓胆嚢疾患は、しっかりとした診断と適切な処置をしないと命に関わる病気です。定期的な検診を行い、疾病を早期に発見し治療することが重要です。 急性肝障害アデノウイルスや細菌感染、古くなって酸化した食事や中毒物質(キシリトール、なめくじ駆除剤など)の摂取、おやつの食べ過ぎ、薬の副作用などが理由となり発症します。急激に肝臓がダメージを負うことで嘔吐や下痢、食欲不振がみられ、重度になると黄疸が出ることもあります。治療は、点滴や強肝剤の投与などの対処療法が中心となりますが、キシリトールなどの中毒物質の摂取が原因の場合は、かなり重度の肝障害がみられることがあり、命に関わります。 胆嚢炎大腸菌や腸球菌の感染が原因となり、軽度の場合は症状がはっきりとせず、進行して胆管炎も起こる状態で黄疸、嘔吐、食欲不振などの全身症状を呈します。診断には、胆嚢に針をさし、胆汁を採取、培養検査を行うことで診断されます。軽症の場合は抗生物質を中心に、利胆剤、強肝剤の投与で改善しますが、胆障害が重度の場合や内科治療に反応が悪い場合は手術で胆嚢摘出を行い、集中的に内科治療を行う必要があります。 胆嚢から採取された膿 胆嚢炎の胆汁顕微鏡画像(細菌多数) 胆嚢粘液嚢腫加齢、内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群、糖尿病)、継続的なステロイド投与などが原因となります。胆嚢内の胆汁の症状が変化し、粘度が高くゼリーのような胆汁となります。胆嚢の胆汁貯留能力や排出機能が傷害され、胆道閉塞、胆嚢拡大が起こり、最悪胆嚢破裂を起こし命に関わる状態となります。初期は無症状、進行することで血液検査で肝酵素の異常がみられ、超音波検査で特徴的な所見がみられるようになります。肝酵素の進行性の上昇や肝道閉塞の所見がみられる場合では手術で胆嚢摘出を行う必要があります。 胆嚢摘出手術の手術画像 胆石、総胆管結石胆石の発生は比較的稀とされており、年齢を問わず発生がみられます。多くの場合無症状であり、レントゲンや超音波検査の際に偶発的に見つかることも多いです。ただし、胆石が総胆管に詰まった場合や、胆石の原因が細菌感染であった場合は治療が必要になります。原因により治療が異なりますが、胆道閉塞が見られる場合は胆石の除去、細菌感染がみられる場合は胆嚢摘出、抗生物質の投与が必要となります。 大十二指腸乳頭切開にて総胆管結石摘出 摘出した結石 肝リピドーシスストレスのかかる出来事や食欲が低下するような病気により、急速に体重減少が起き、肝臓に脂質が沈着することで発症します。嘔吐や食欲廃絶がみられ、血液検査では黄疸、肝酵素の上昇がみられ、肝臓の細胞診(針生検)を行うことで診断されます。治療は、完全な栄養補給を行うことが重要です。自分からは食事を食べないので、鼻、もしくは食堂にチューブを設置し強制的に給餌を行います。治療は長期にわたることが多いですが、栄養補給、適切な補助療法を行うことで回復することも多い疾患です。 肝リピドーシスの肝臓細胞診 腫瘍肝細胞癌、胆管癌、血管肉腫、リンパ腫、肥満細胞腫などがみられます。また、ほかの腫瘍が血行性に肝臓へ転移する場合も多いです。無症状な場合から慢性的な嘔吐や下痢、食欲不振など様々な症状がみられます。特に肝細胞癌は巨大になるまで気付かないことも多いです。リンパ腫や肥満細胞腫は化学療法(抗がん剤)治療を行い、肝細胞癌などは、摘出が可能であれば手術を行っていきます。ただし、肝臓は血流の豊富な臓器であり、危険を伴う手術となることがあります。 方形葉に発生した肝細胞癌 外側左葉に発生した血管肉腫