このような症状に当てはまる場合、愛犬・愛猫が消化器系の病気にかかっているかもしれません。食欲がないご飯を吐いてしまう吐きそうなのにヨダレしか出ていない吐いてぐったりとしている背中を丸めるようにうずくまる下痢が続く血便が出た体重が減った元気がない寝ている時間が長いお腹が張っている呼吸が苦しそう尿の色が濃い消化器系の病気では「なんとなく元気がない」といったあいまいな症状が出る場合があります。また、ワンちゃん・ネコちゃんはよく吐いてしまうものですから、「いつものことか」と思うかもしれませんが、大きな病気が潜んでいるかもしれません。消化器とはご飯が口に入ってから排泄されるまでの器官のことで、具体的には胃・腸・食道などを指します。消化器系の病気はストレスや食べすぎ・環境の変化といったさまざまな原因で起こります。症状も軽度なものから命に関わるものまであるため、異変に気付いたら早めにご相談ください。ワンちゃんに多い消化器系の病気1.急性胃腸炎ウィルス、細菌,寄生虫などの感染、問題のある食べ物、その子に合わない食べ物、急激な食事の変更、毒物などの摂取により発症します。突然の嘔吐、下痢が起こり、中には吐物や便に血が混じり、食欲もなくなります。通常は対症療法にて軽快しますが、脱水が重度の場合は積極的な点滴が必要となります。 血便 粘血便 2異物おもちゃ、ボール、石、ビニール、ひも、衣類、食べ物の入った袋、串など、動物は予想していないものを食べてしまうことがあります。食べてからまだ間もない場合は、薬を用いて催吐させることや内視鏡にて摘出ができますが、時間が経過し胃腸閉塞を起こしてしまうと手術による摘出が必要となります。 小腸に詰まったとうもろこしの芯 舌に引っかかった紐状異物 3.膵外分泌不全膵臓の異常により、消化酵素の分泌が不十分となり消化不良を起こす病気です。食欲はあるものの体重が減少し、下痢が続きます。TLI(血清中トリプシン免疫反応)の測定で診断され、消化酵素を投与することで改善しますが、生涯治療が必要となります。 4.胃捻転胃が正常な位置から捻れてしまい、胃内容物の排出が障害され、空気のより急性に胃が拡張します。重度に胃が拡張することで循環障害を起こし、死亡する可能性が高い疾患になります。食後に発症することがあり、吐こうとするが何も出てこないえずきや腹部の膨満、元気がなく、ぐったりするなどの症状がみられます。症状がみられた場合は、早急な来院が大事であり、診断後は出来るだけ早い治療(胃内ガスの抜去、胃固定の手術など)が必要になります 胃捻転 術前 胃固定 5.会陰ヘルニア高齢の雄犬(未去勢)でみられることが多い疾患で、肛門周囲の筋肉が脆弱となり、直腸が筋肉の間から脱出しお尻の周りが腫れていきます。そこに便が貯留し、排便困難や便秘を起こします。直腸検査で筋肉間に穴が開いていることを確認して診断します。治療は手術により破綻してしまった肛門周囲の筋肉を再建していきます。また、去勢手術や直腸や精管などの臓器固定を併用することもあります。手術により排便は正常に戻りますが、再発することもある厄介な病気です。 会陰ヘルニア 内閉鎖筋転位によるヘルニア閉鎖 6.IBD(炎症性腸疾患)慢性的に腸に炎症が継続する病気で、腸から栄養を吸収することができなくなり、下痢、嘔吐、体重減少がみられます。重度になると低蛋白血症となり腹水の貯留が起こります。内視鏡検査での組織検査で診断されます。食事療法、抗生物質投与や免疫抑制療法を行います。継続的な治療が必要で、薬とうまく付き合うことも重要です。 内視鏡下生検 リンパ管拡張症 リンパ球形質細胞性腸炎 7.腫瘍無症状な場合から慢性的な嘔吐や下痢、食欲不振など様々な症状がみられます。消化器型リンパ腫、腺癌、平滑筋肉腫、GIST (消化管間質腫瘍) などが発生し、腫瘍の種類によって予後は大きく変わります。リンパ腫の場合は慢性的な下痢、嘔吐が多く、しこりをつくらない場合もあります。腺癌の場合は腸が細くなり通過障害を起こすことがあります。平滑筋肉腫やGISTはしこりが巨大化することもあります。腫瘍が発見された場合は細胞診や内視鏡下組織検査を実施し、診断に合わせた治療が必要となります。 内視鏡下生検により消化器型リンパ腫と診断 小腸に発生した平滑筋肉腫 小腸に発生した腺癌 盲腸に発生したGIST (消化管間質腫瘍)