Something

Takeshi Hirano

(つぶやき)

「患者(動物達)さんには健康になってもらいたい。飼い主さんやスタッフの皆さんには幸せになってもらいたい。」
この事は、50年近くも曲がりなりにも動物臨床に携わって来ている私の願いであり心情でもあるので、自ずと日々をすごすエネルギー源にもなってるのかもしれません。それ故に関わってくる各所、全体のことをそれなりに試行錯誤しながら考え、行動をしてきてますが未だに課題は山積みです。
現在では開業当初の頃とは社会の変化に伴い、動物達の位置づけもペットから伴侶動物、パートナーに、また、病院の形態も随分と様変わりしてきています。現在、そう言った中で多くのスタッフと共に動物医療に関わってますが、スタッフのそれぞれが一つのポリシーを共有して、飼い主さんと動物達の病、健康、躾等に関わる中で、日々研鑽しながら発生してくる課題を消化、吸収して血肉とし、其々が生きがい感を増強して感謝の気持ち一杯で毎日過ごせる環境にしたいですね。再度、自問自答しながら整理してみます。現在、当院では獣医師、看護師、事務員の構成で、3つのセクションの連携で動物医療が行われています。

*当然のことながら、スタッフ一人一人の存在価値がちゃんと認められるところにあり、わたくしには「無意識のうちにでも強者の色眼鏡で彼等を見てる。そうすると真実を見失ってしまうぞ!」と肝に銘じよと言って聞かせてます。それに、院内でも、社会でもこのことは基本のはずと。そうすれば、全ての現象に自然と「ありがとう」と言う言葉が生まれてくるはずです。そうでないと「どうして、わからないの?」の言葉が彼らに投げつけられるばかりで、何一つ問題解決には繋がらないのです。

*職場はスタッフ全員が個々にいきいきと働けることに尽きます。I日の大半を一緒にすごしているようなものですから、第二の家族といっても過言ではなく、わたくしの病院にとって大切な財産であるはずです。あなた方が燃え尽きないようにする配慮ができるよう、日々、精進すべきと言い聞かせています。さて、昨今、どこの業界においても女性の進出が目立ちます。当院においても女性スタッフの占める割合が大半になってきてます。その中で女性のライフステージに合わせて働けるよう色々な面で工夫、改善して安心して働けるよう努力していきたい。

*わたくし、50年近く臨床獣医師として患者(動物)と飼い主(ヒト)に直接、触れあうやり取りが余程、好きなようです。また、物言わぬ患者と時折、無言で対峙するのもいい。治せる病気もあるし、治療効果があがらないで治療に悪戦苦闘する時もある。また、力及ばず、亡くなって行く子もある。一喜一憂しながら生老病死と向かいながらの仕事ですが、丸ごと、この仕事に使命感を持っています。又、第一次診療の現場だからこそ、味わえるのかなと思っています。わたし達の毎日は飼い主と患者が診療所を訪ねてくれることから始まります。診察室はわれわれの舞台です。だから、それぞれが、いい役者を演んじなければいけない。診察が終わる時、飼い主さんはいつもありがとうございますといってくれます。こんな、ありがたい仕事はそんなにないと自負してます。

*スタッフ全員にもぜひ、気持ちを共有してほしいです。現在、獣医領域もわたしが小動物医院を開業した頃とは格段の様変わりをしてます。専門化が進んで来てますし、高度医療も導入され、人医療とも変わらないくらいになってきています。そんな環境下、獣医師の先生方は寸暇を惜しんで獣医学書を読み、症例を検討し、その蓄積を治療に反映させるように努力されていることに心から感謝しています。その中で私なりの提言を若い獣医師にしたい。ぜひ、専門医をめざすくらいの能力を持ちあわせたホームドクターになってほしい。二次診療所に任せるかどうかの判断も個々の獣医師間に統一した判断基準を共有した上でのことです。その為に必要な教育、研修を内外とわず、積極的に取り組みたい。ここまでは自分達で可能、これ以上は紹介するというラインをしっかりと決めることが大切であると思ってます。

*一方、看護師のみなさんは診察の補助、トイレ掃除、器具の洗浄、在庫管理、入院動物のケア….数え切れないほどの仕事を担いながら、手の空いた時にはさらに仕事を探して動いてくれます。感謝の気持ちで一杯です。

獣医師との連携でよりいっそう充実した動物医療にするためには、まず、基本は獣医師の立場を尊重して、あくまでも補助、補佐を第一義に 心がけてほしい。看護師さんは獣医師では表現できない患者(動物)への愛情、いつくしみを与えてあげられる存在で、飼い主さんに直接、伝えられ、ありがとうって言ってもらえる存在です。その為には動物看護、診療補助における知識、技量のスキルアップを日々精進して欲しい。頑張ってください。くしくも、令和4年5月1日から看護師さんの資格が国家資格となります。資格取得者は名称も愛玩動物看護師にかわります。

*受付業務は病院の顔であり、こころだと思っています。無論、言葉のやり取りが大きいのですが、まごころを持って接すれば、目の優しさに現れ、言葉の音色に現れてきます。飼い主さんは敏感に受け止めているはずです。受付は知らずと、院内の日々の行為の積み重ねが表現される場所です。

*また、会計、事務、総務の仕事は病院の裏方になりますが臨床現場が円滑に業務が遂行できるように、各所の伝達経路の交通整理の役目があり、報告を滞りないようにと依頼ごとへの速やかな処理が必要な部署です。経営管理上、部署内のしっかりした組織を整えて欲しい。獣医療と経営はコインの裏表で一体だと思っています。

*われわれに与えられた仕事はスタッフ全員が一つの目標に向かって進んでいるということをそれぞれがよく理解し、共に人としても心豊かになり、それぞれの人生が希望と生きがいに満ちたものになることを願っています。みんなで、素敵な病院を作りましょう。そして、私たち一人一人が組織人であることを再認識し、地域の方々に動物医療を通して社会貢献しましょう。

 

追記:「やまあらしのジレンマ」
あるところに、二匹のやまあらしが住んでいました。冬の朝、とても寒いので、二匹のやまあらしは、互いに暖めあおうとして身をよせあいました。しかし、あまりに近く身を寄せ合ったため、二匹のやまあらしは、自分の体に生えているハリによって、互いに相手を傷つけてしまいました。その痛みから、二匹のやまあらしは、互いに相手から離れたのですが、今度は、また、さむくてたまらなくなりました。そこで、ふたたび二匹のやまあらしは、身を寄せあいました。するとまた、互いに傷つけてしまったのです。こうして、二匹のやまあらしは、離れたり、ちかづいたりことを繰り返し、ついに、最適の距離を見出したのです。

ショウペン・ハウエルの寓話より

この寓話は組織のこと、人間関係の事を考える際には、いつもいいヒントを私に与えてくれてます。

令和4年2月28日        記