Something

Takeshi Hirano

キャメルとフク

フクは明日、新しい飼い主の所へ貰われて行きます。Kさんに拾われるまでは1人ぼっちで外をうろうろしていました。現在、生後1カ月半位、雑種の雄ネコ。拾われる前までの事を想像すると、フクは男の子なのですが「マッチ売りの少女」の物語が現れてきました。

マッチ売りの少女

原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン 翻訳:結城浩

 

          あらすじ

ひどく寒い日でした。 雪も降っており、すっかり暗くなり、もう夜 —— 今年さいごの夜でした。 この寒さと暗闇の中、一人のあわれな少女が道を歩いておりました。 頭に何もかぶらず、足に何もはいていません。 家を出るときには靴をはいていました。 ええ、確かにはいていたんです。 でも、靴は何の役にも立ちませんでした。 それはとても大きな靴で、 これまで少女のお母さんがはいていたものでした。 たいそう大きい靴でした。 かわいそうに、道を大急ぎで渡ったとき、少女はその靴をなくしてしまいました。 二台の馬車が猛スピードで走ってきたからです。片方の靴はどこにも見つかりませんでした。 もう片方は浮浪児が見つけ、走ってそれを持っていってしまいました。 その浮浪児は、いつか自分に子どもができたらゆりかごにできると思ったのです。 それで少女は小さな裸の足で歩いていきました。 両足は冷たさのためとても赤く、また青くなっておりました。 少女は古いエプロンの中にたくさんのマッチを入れ、 手に一たば持っていました。 日がな一日、誰も少女から何も買いませんでした。 わずか一円だって少女にあげる者はおりませんでした。…

親からも離れ、ひとりぼっち。ミャアミャア鳴いて「誰か気づいて。」食べ物の調達も難しい。段々、身体が小さくなってくる。「おなかペコペコ」体の力も抜けてきてる。やっとKさんの目にとまった。Kさんは見てしまったのでその場から離れる事ができなくなり、夕方から急に寒くもなってきてるし、それに雨が降りだし、とっさにその子猫を連れて帰りました。

キャメルは今年の3月に20歳の誕生日を迎えてます。慢性腎臓病で皮下点滴をしに週2回、当院にやって来ます。Kさんの所には高齢のキャメルの他に4匹の猫がいます。 Kさんは子ネコにフクと名づけました。そう「福」です。数日してフクはKさんの手作りの首輪をして、キャメルと一緒に健康診断にやって来ました。数日ですが、すっかり馴染んでいるようです。やんちゃな子猫の仕草です。おばあちゃんのキャメルにも「あそぼうよ」耳を引っ張ったり、体ごとぶっつけたり、やんちゃぶりを発揮。キャメルも今では、フクちゃんの事を受けいれてます。しかし、Kさんたちには一抹の不安があります。自分達夫婦が高齢なものなので、フクちゃんを最後までちゃんと面倒を見れるのだろうかがそうでした。キャメルの点滴の最中にその不安を相談されました。こちらも、色々な状況を想定して説明しましたがどうやら、Kさんは既に、里親を探す決意を固くしてた様です。

11/11.新しい飼い主Hさんが決まり、フクちゃんを引き渡すことになった様です。追記があります。Kさんは約束通り、フクちゃんを引き渡したそうです。ところが、あれだけはっきりとした気持ちでとった行動でしたが、フクちゃんがいない夕方からKさんは食事も喉を通らないし、夜も眠れなくなりました。結局、翌日に再度、フクちゃんを引き取りに行ったようです。キャメルの点滴の時、その胸の内を聴く事になりました。よって里親の件は未だ?です。Kさんの心境は複雑です。 HさんもKさんの心情をよく理解してくれたようです。それにしても、「フクちゃんは幸せだよ。Kさん決して焦らずにね。」の思いが私のこころの中に残ってました。11/13の事ですが結局、Kさんは再度熟慮した上で、フクちゃんの幸せになる選択をし、新しい飼い主 Hさんに託しました。11/17.キャメルの点滴に来られた時、報告がありました。 Hさんから送られてきた写真を見せてくれました。

キャットタワーで居眠り中のフクちゃんの写真です。

令和3年11月17日     記